
【給食だより】2026年9月9日号
給食当番、世界へ。
それは、最初から壮大な計画だったわけではない。
むしろ、周囲から見れば少し変わった音楽活動だった。
日本の農産物や魚、果物、そして「食べること」をテーマに歌を作る音楽ユニット――給食当番。
リーダーであり作曲家のサワグチカズヒコ。
ボーカルの碧(みどり)。
そして、それぞれの楽器と個性を持った仲間たち。
彼らは、いろいろな食べ物の歌を作っては、全国で歌っていた。
「なんでバンドなのに、魚の歌ばっかり歌ってるの?」
「今度は果物?」
「次は何を食べるの?」
そんな声を聞きながら、給食当番は歌い続けた。
本人たちも、まさかそれが世界につながっていくとは思っていなかった。
第一段階 🇯🇵 日本
最初の給食当番は、
「食べ物の歌を作る変なバンド」
だった。
農家さんに会い、魚を見て、果物を食べる。
そこで聞いた話を歌にする。
スーパーに並ぶまで誰も知らなかった生産者の苦労。
名前も知られていない魚。
規格外になってしまった野菜。
旬になると一斉に収穫される果物。
給食の時間に子どもたちが何気なく食べているものの、その向こう側にはたくさんの人がいる。
サワグチは、それを一つずつ歌にしていった。
やがて、給食当番の活動は少しずつ知られるようになった。
「食べ物を歌にするなら、給食当番に頼もう」
そんな声が全国から届くようになった。
農業。
漁業。
食育。
地域おこし。
そして、音楽。
バラバラだったものが、少しずつ一つにつながっていった。
第二段階 🇹🇼 台湾
そして、給食当番は海を渡った。
台湾だった。
最初は、日本と台湾の文化交流だった。
しかし、台湾の農家や学校、自治体、アーティストたちと出会ううちに、彼らはあることに気づいた。
日本と台湾は、思っていた以上に似ている。
おいしいものを大切にする。
農家さんが自分たちの土地を愛している。
地域ごとに自慢の果物がある。
そして、子どもたちに食文化を伝えたいという思いがある。
給食当番は台湾の果物を歌にした。
パイナップル。
マンゴー。
柑橘。
釈迦頭。
一つの歌ができるたびに、人と人がつながっていった。
台湾のアーティストと一緒に演奏する。
学校で子どもたちと歌う。
農家さんから話を聞く。
自治体の人たちと未来について話す。
いつしか台湾は、給食当番にとって「海外公演の場所」ではなくなっていた。
一緒に歌を作る仲間がいる場所になっていた。
第三段階 🌏 アジア
やがて、その輪は台湾だけでは収まらなくなった。
日本と台湾を中心に、
「食と音楽の国際交流」
が始まった。
韓国。
フィリピン。
タイ。
ベトナム。
インドネシア。
マレーシア。
それぞれの国に、それぞれの食べ物がある。
それぞれの農家がいる。
それぞれの漁師がいる。
そして、それぞれの子どもたちがいる。
給食当番は、現地のアーティストと一緒に歌を作った。
日本の曲を演奏するだけではない。
その土地の食べ物を知り、その土地の人の話を聞き、その土地の言葉で歌う。
気がつけば、給食当番のステージには、日本人だけではなく、台湾、韓国、東南アジア……さまざまな国のミュージシャンが立つようになっていた。
ステージの上には、
日本の太鼓。
台湾の楽器。
アジア各国の民族楽器。
そして給食当番。
国境を越えて、みんなで一つの曲を演奏する。
その曲のタイトルは、
「いただきます。」
だった。
第四段階 🌎 世界
そして、ある日。
給食当番の活動に、一つの大きなテーマが加わった。
世界の食料問題。
世界には、食べ物が足りない人たちがいる。
その一方で、まだ食べられるものが大量に捨てられている。
利用されないまま海に戻される魚。
廃棄される農産物。
大量に発生する食品ロス。
十分な食事を取れない子どもたち。
給食当番は考えた。
「僕たちに何ができる?」
答えは、やっぱり音楽だった。
未利用魚を歌にする。
食品ロスを歌にする。
農家を歌にする。
漁師を歌にする。
子どもたちの給食を歌にする。
そして、
「食べる」という、人類共通の行為そのものを歌にする。
給食当番は世界各地で演奏するようになった。
アジアからヨーロッパへ。
アメリカへ。
アフリカへ。
世界中の農家、漁師、子ども、音楽家と出会いながら、歌を作った。
いつしか海外のメディアが、給食当番をこう紹介するようになった。
「Food and musicを通じて、世界の食料問題に取り組む日本の音楽ユニット」
かつて、
「食べ物の歌を作る変なバンド」
と言われていた給食当番は、
いつの間にか世界中の人々に知られる存在になっていた。
そして――
ある年の秋。
一通のメールが届いた。
サワグチは、何度も読み返した。
「……これ、本物?」
碧が隣から画面を覗き込む。
「なになに?」
サワグチは黙ったまま、画面を碧に見せた。
そこには英語で、こう書かれていた。
World Food Prize
世界の食料問題に貢献した人々を称える、世界的な賞。
その式典への招待だった。
そして――
給食当番の活動に対する特別表彰。
サワグチが笑った。
「……行くか。」
碧も笑った。
「うん。」
アイオワ州、世界食糧賞の舞台へ
数週間後。
アメリカ・アイオワ州。
歴史ある州議会議事堂。
世界中から、食料問題に取り組む人々が集まっていた。
壇上に立った司会者が言う。
「今年、音楽を通じて世界の食料問題への関心を高め、国境を越えて人々を結びつけた活動が高く評価されました。」
会場が静まる。
「日本から来た音楽ユニット――」
巨大なスクリーンに文字が浮かび上がる。
KYUSHOKU TOBAN
そして、
SAWAGUCHI KAZUHIKO & MIDORI
碧がサワグチを見る。
「……夢みたいだね。」
サワグチは笑った。
「いや。」
少しだけ間を置いて、
「夢だったんだよ。」
給食当番がステージへ向かう。
日本。
台湾。
アジア。
そして世界。
これまで出会った人たちの顔が、スクリーンに次々と映し出される。
農家さん。
漁師さん。
子どもたち。
台湾の仲間たち。
世界各地のミュージシャン。
そして、給食当番のメンバー。
演奏が始まる。
最後の曲。
世界中の子どもたちに向けて作った歌。
碧がマイクを握る。
そして、静かに言う。
「世界中の子どもたちが、おいしいご飯を食べられますように。」
音楽が始まる。
その先へ
それから、さらに年月が過ぎた。
今度はノルウェー。
オスロ市庁舎。
世界平和に貢献した人々が称えられる、世界で最も権威ある式典の一つ。
そこにも、給食当番の姿があった。
サワグチがピアノの前に座る。
碧がマイクを握る。
ステージには、世界各国から集まった音楽家たち。
そして客席には、世界中から集まった人々。
演奏が始まる。
日本。
台湾。
アジア。
アフリカ。
ヨーロッパ。
アメリカ。
世界中の食べ物と、人々の暮らしをつないできた音楽。
最後に、給食当番が全員で叫ぶ。
「いただきます!」
客席からも声が返ってくる。
「いただきます!」
世界中の人々が、同じ言葉を口にしている。
サワグチはステージの上から客席を見渡した。
給食当番は、世界を救ったわけではない。
ただ、ずっと歌ってきた。
食べ物は大切だ。
農家さんも、漁師さんも大切だ。
そして、国が違っても、人間はみんな食べて生きている。
その当たり前のことを、歌い続けてきただけだ。
照明が落ちる。
碧がサワグチに尋ねる。
「ねえ、次はどこ行く?」
サワグチは少し考える。
そして、
「……月じゃない?」
給食当番の次の給食は、
まだ誰も知らない。

-------誰やねんと写真にツッコミたい気持ちは抑えて抑えて・・・でもわりと編成似てるし、ちゃっぴーも学習してくれているようです・・・
